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蓄音機本体レストア事例【ビクトローラ J1-51】

レストア : ビクトローラ J1-51 1935年製造(国産機)

たいへん申し訳ありませんが、お客様からの蓄音機修理依頼には対応しておりません

※この修理事例の内容は、弊社管理の蓄音機修理内容を開示しています

※皆様がお持の蓄音機を修理する場合、参考になればという事で掲示しております

 ご了承ください

ビクトローラ J1-51という1935年製の国産モデルです。

この個体の不具合は

・アームの中間可動部分が固い。

・アーム取り付け根本部分ガタが大きくサウンドボックスがターンテーブルに接触。

・ターンテーブルマウントの木部分にペンキが塗られていて状態があまり良くない。

・サウンドボックス取り付け部ゴムの劣化。

・天板の突板が剥離。

という事でレストアです。

 

 

まずは本体のバラシです。

内部に木で作られていますラッパが見えています。

回転機構部分は特に問題無い様ですので、低速ギア部分にはスプレーグリスを。

(※摺動抵抗の少ないシリコンスプレーグリスが良いと思われます)

高速回転部には、マシン油を塗布します。

(高速回転部にグリスを塗布しますと粘度が気温で左右され、回転抵抗になりやすいので注意です)

これがこの個体の機銘板。

ビクトローラ J1-51 1935年製です。

ターンテーブルとメカをマウントしている板は、黒い塗料で直した痕があります。

本体の蓋部も突板の接着剤が浮いてしまってボロボロなので、両方サンダーで磨きます。

磨いた板は合板の木目が見えます。

せっかくなのできれいな木目を活用して

オイル系塗料を薄く延ばして、木目が出るように塗っていきます。
塗料が乾いたら、メカや銘板を板に組み付けていきます。

アーム部分も全分解して、接合部、可動部全てパーツクリーナーで洗浄です。

真鍮削り出しで、ねじを切ってありますが、長年使用されて油をさしたあとがあります。

油が埃を呼んで付着し、それが抵抗になってアーム可動部全般の動きを悪くしています。

アーム可動部を組み上げ、ストッパービスの取り付け。サウンドボックスの取り付け部ゴムは劣化して使用不可状態でしたので、取り除いて厚み1mmのゴム板を切り取ってブチルゴム系両面テープでサウンドボックスのアーム取り付け内部の円周上に貼り付けです。アームのガタの原因はアーム根本の可動部に上下5個づつベアリングボールが入っていて下側のボールが全て脱落していたのが原因でした。

3.2φのベアリングボールを発注して入荷。可動部をグリスアップしてベアリングボールをセット。

アーム根本のツバの部分上下に、ボールベアリングをセットして回転方向にスムーズに動く機構ですが、下部のベアリングストッパーの役目をするリングが緩く調整を必要とします。

アーム可動部の金属製アンダーカバーを取り付けて完了。本体に組み込み。

こうして古い機械がよみがえります。電気を一切使っていないという事が大きなメリットで、機械式メカは代替え部品でほとんどが生き返ります。空気振動を機械振動に変えレコードに記録。記録された機械振動を空気振動に戻すという単純なメカだからこそ『究極のオーディオ』といえるのかもしれません。使っている素材も振動系は金属で、ラッパと器は木という組み合わせ。

それは楽器と同じなのです。

 

蓋の上面は、突板をはがして板面をサンダーで磨き黒のオイル系塗料を薄めて塗布して拭きあげし、荏油で最終仕上げした後の天板です。

1935年製造という85年超前の蓄音機ですが、当時の音が復活です。

 

TEXT:M_Ichihashi